渋谷のシンソウ
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渋谷のシンソウ第二話
現在の円山町界隈。昭和以前は荒木山と呼ばれ、花街としてつい最近まで栄えていました。
前回につづいて、そんな花街としての円山町を知る、高橋すみこさん、中島すみえさん、鈴木たもつさんに、当時のお話を伺いました。
一見さんはお断り
高橋:一見さんは、一切お断り。フッと入ってこられても、お断り。
そりゃあ、そうでしょうよ。そんな知らない人を、遊ばせるわけにはいかないもの。
ナレーション:一見さんお断り。
花街として栄えていた当時、円山町界隈のほとんどの料亭が一見さんお断りでした。
文字通り、初めてのお客さんを寄せ付けないという意味のため、一般的に評判の悪いこのしきたり。
どんなお客さんでも最初は一見さんなはず。一体どうすれば一見さんお断りの料亭に入れたのでしょうか?
また、いっけん不条理に見えるこのしきたりには、一体どのようなワケがあったのでしょうか?
お客様を守るため
高橋:紹介者があればいいのよ。
鈴木:コネがあればね。
中島:なんて言ったらいいのかな。割りに素性の決まっていたお客様ばかり見えていたから、万一、お客様の身辺やお仕事の関係か何かに危害があった場合はいけないので、それで一見さんを全部お断りしたの。その方が、どこに勤めていて、どういう方だって分かったら、お入れするということね。お客様を守るためなの。
ナレーション:そう、一見さんお断りのしきたりは、お客様を守るためだったのです。
更にこれを徹底させるために、次のようなならわしもありました。
中島:あなたがもし、田中さんというお名前で料亭に見えたとき、「田中さん」と呼ぶ人は、誰もいないの。(呼び方は)「たーさん」なの。
高橋:そう、上の一文字だけね。
中島:だから鈴木さんなら、「すーさん」なの。
高橋:「すーさん、すーさん」って言うわけ。名前言わないの。
鈴木:それで通っちゃうからね。
中島:だから、料亭の女将だけがあなたの名前を知っているわけ。それで、芸者さんにしろ、仲居さんにしろ、名前を知らないわけ。「たーさん」なら、「たーさん」としか名前を知らない。「すーさん」という方だったら、あの方は「すーさん」という方だなって、思っているわけ。それだけお客様を守ったわけ。
ナレーション:料亭では、食べたその場ではなく、後日お勘定をするという決まりがありました。
こうして所以を知ると、この決まりも、一見さんお断りのシステムがあってこそだったとわかります。
料亭でのお会計
高橋:しない。お会計なんてして帰る人は、一人もいない。
中島:私の子供の時は、(お会計は)一年に一遍だったのよ。
鈴木:節季払いといってね。
高橋:お中元に払うとかさ、お盆に払うとか、暮れに払うとか。後、出世払いとかね。(代金を)払わない人は、「出世したら払う」とか言ってね。そんなの取れっこ無いけどさ。しょうがないよ、そんなのは。最初からそういう約束なんだから。「出世払いでいいわよ」と言ったのを、料亭の方でもちゃんと守るから。
鈴木:その代わり、女将さんは相手の人柄をちゃんと見てますよ。
高橋:昔は、お金に拘らないからね。
鈴木:この人は堅いなと思う人は、出世払いでも良いと。必ず成功するんだよね、そう人はね。
高橋:まあね。偉くなればいいけどね。
中島・高橋:(笑)
中島:でもね、「出世払い」だって言った人で、やっぱり十年くらい経ったら、ちゃんと挨拶に来るのよ。
高橋:「お母ちゃん、良くなったよ」なんて言って、遊んでいくわよね。
中島:そうそう。
高橋:ちゃんと義理人情果たさない人は、やっぱり出世しないわよね。そういうもんよ。